世の中は、どんどん便利になるもので、知れば知るほど、人間の願いは叶えられている。
ラジオが好きな私は、以前からパソコンをしながらラジオが聞けないかと思っていたら、インターネットラジオというものが存在し、オンラインでラジオ番組が楽しめる。
音楽というのは、自らの趣味趣向が色濃く出る為、何分偏りがちであるが、ラジオであると普段触れることのない音楽と知り合う事ができる。
私は普段、ロックやパンク中心であるが、此処の所、毎朝のメールチェック時はクラシックを聞いている。
楽曲名が複雑だったりするので、あまり曲名や作曲家は覚えられないが、バイオリンやピアノなど様々な楽器の音色が、朝の空気を濃くしてくれる様な気になる。
年の瀬になり、追われる様に改植作業に明け暮れる日々が続いた。
早朝は−8℃を記録する信州であるが、日の当たる温室での改植作業は、濡れたタオルを絞るように、全身から汗が吹き出る。
今まで世話になったバラを根元から切り、潅水チューブを根元から取り、ロックウールマットごとバラの根をベンチから抜き取る。
ベンチを洗浄し、新しい防根シートを敷き、新しいロックウールマットを水に漬ける。
マットに苗を定植し、潅水チューブを根元に刺し、床を掃除する。
体力的にきつい割には、文字に起してしまうと、地味な作業である。
この後は、新芽の成長を待ち、先ずは株をしっかり育てて、花芽を付けるまで7ヶ月。
成長を待っては、手入れをし、病気や害虫の等の侵略を妨げる。
クラシックリスナーとしては、初心者と言われてしまうかもしれないが、私はフランスの作曲家モーリス・ラヴェルが作った「ボレロ」が好きだ。
ただひたすらスネアドラムのリズムが続き、徐々にフルートやクラリネットが色合いを足していく。
単調とも思えるリズムは、長く続く毎に様々な一面を見せ、次第に荘厳さを増して感動的なクライマックスを与えてくれる。
「バラ」という一見響きの良い職種ではあるが、他の農業同様、普段は地道な作業の繰り返しである。
しかし、まだ爪楊枝の先ほどしかない新芽が、最終的には美しい花を咲かせ、誰かの日常をささやかに彩る。
「ボレロ」と「バラ農家」に共通点を感じるのは、私だけであろうか?
朝食後にパソコンの画面に向かい、自分で入れたコーヒーを飲みながら、クラシックを聞く。
セレブの様だが、寝癖で頭は爆発、二日酔いで顔はパンパン。
このギャップがたまらない。
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