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 堀木園芸のブログは、筆者が謁見、拝聴、体験した事を先方の許可なく掲載させて頂いております。

 ご抗議や削除を求められる方は、
下記のアドレスまで、ご連絡下さい。



  堀木 園芸

horiki_rozen@ybb.ne.jp


Weblog  ブログ

2008年12月27日(土)
「 雪ぐ  















 執念深い人を「蛇の様に執念深い」と比喩される。

 

 それ程、蛇は執念深いのかと調べてみるとそうでもない。

 

 獲物に逃げられてしまった場合は、簡単に諦めてしまうらしい。

 

 だだし、蛇を捕獲して1ヶ月程食料を与えなくても生きているらしい。

 

 2日も飯を食わなくては、私など簡単に死んでしまうが、執念深さなら蛇にも負けない自身がある。

 

 情けないとか、女々しいと言われても一向に構わないが、私は一度味わった屈辱は絶対に忘れない。

 

 雪辱を果たすまでは、何年も何年もずっと覚えている。

 

 ここの所、父とペアを組んで仕事をしている。

 

 バラを扱いだり剪定作業は重労働の為、男2人で行う。

 

 父のバラ屋歴37年。私は5年。

 

 父の年齢58歳。私は28歳。

 

 キャリアは7倍だが年齢は私が半分である。

 

 ところが一緒に仕事をやっていると、重労働に関わらず同等の速さで仕事をする。

 

 これが私には悔しくてたまらない。

 

 昨年などは大差で負けていた。

 

 今年は若干、私の方が早く進み、余裕ヅラで振り返ると、父が抜いた株の根っこの方が綺麗に抜けている。

 

 このドチクショーッ!!

 

 仕事は迅速性を重視し、「スピードスター」の異名を誇るこの私が、還暦間近のおっさんに勝てないのだ。

 

 家族の誰も気付かないが、内面は、はらわたが煮えくり返ってしょうがない。

 

 もう汗なのか涙なのかわからないくらい私の顔は赤面し、ぐしょぐしょである。

 

 怨み晴らさで措くべきかっ!

 

 これから始まる怒涛の選定作業において、目に物見せてやる。

 

 私の執念と遺恨は腹の底で渦巻き、力を与えてくれる。

 

 そんな私に、蛇も舌を巻く。

 

 そして私も二枚舌。


2008年12月25日(木)
「 Chelsea  

 私は酒飲みだが、甘い物も好きである。

 

 特に疲れた時や朝や食事を腹一杯食べた後のデザートは最高である。

 

 以前にもブログに記したが、12月でブライダルピンクの栽培をやめる事になった。

 

 市場性を考えても前時代的であるし、我が家の品種全体を見ても少し雰囲気が違う。

 

 土耕栽培でブライダルピンクを始めて10年。

 

 老化し樹木と化した株元には、カイガラムシが蔓延っている。

 

 父と2人、スコップで掘り起こす。

 

 特に会話もなく黙々と。

 

 21日の日曜日にブライダルピンクの最後の出荷を迎えた。

 

 私は最後のLサイズ50本を箱に詰める時、「お世話になりました。」と囁いた。

 

 10年前といえば、私はまだ高校生であった。

 

 妹たちも学生で、愛犬のリヴは我が家に来たばかりで、スリッパくらいの大きさだった。

 

 私は10年間のほほんと生きてしまったが、ブライダルピンクは毎日、毎日花を咲かせ、我が家の糧となり私たち兄弟を育ててくれた。

 

 バラ屋に就農し、何品種ものバラを育ててはやめてきたが、これ程強く感傷に晒された事はない。

 

 夏場にゴミ同然の価格がついたこともある。

 

一週間に数千本も注文が入り、小躍りしたこともある。

 

 堀木園芸のブライダルピンクに、もう逢うことは出来ないが、誰に何と言われようが、可憐に咲いた明るいピンク色の彼女は間違いなく銘花である。

 

 沢山の「ありがとう」の気持ちが溢れてくる。

 

 私がバラ農家であり続ける限り、ブライダルピンクはとても美しいバラだったと後世にも伝えていきたい。

 

 ほんのりセンチメンタルなった時にも、甘いものがいい。

 

 明治製菓の「チェルシー」もブライダルピンク同様、何年も愛されるスウィーツである。

 

 さすが、「ママの味」である。















2008年12月22日(月)
「 Drama  

 私は映画を見るのが好きだが、殊の外映画館には足を運ばない。

 

 DVDの普及と共に自宅で映画を見ることが多くなった。

 

トイレに行きたくなれば一時停止も出来るし、酒を飲みながら鑑賞できるので大変便利だ。

 

 様々なジャンルの映画がある中、アメリカのラブコメディーは安心できる。

 

 美男美女が運命的な出会いをし、擦った揉んだした挙句、ハッピーエンドを迎える。

 

 日本人の遺伝子には「水戸黄門」や「遠山の金さん」の終局が刷り込まれている。

 

 最後の最後で必殺技(印籠や桜吹雪)が出て「これにて一件落着!」のハッピーエンド。

 

 それが体に馴染む定番の姿である。

 

 何とか年内に定植と剪定を終え、すっきりとした気持ちで一年のエンディングを迎えたい我が家の仕事は正に佳境だ。

 

 「水戸黄門」で言えば、角さんと助さんが大暴れの最中。

 

 とりあえず、「バイアモーメント」と「レディチャペル」の定植は終わった。

 

 出荷もほとんどなく、花切りに急かされる事もなくなり、作業に専念できる。

 

 一年間の締め括りである師走も後半に差し掛かり、歳の暮れというだけあって、エンディングが近い。

 

 「不景気」と言う文字が毎日の様に報道されるが、ここらで一発逆転サヨナラ満塁ホームラン級の必殺技をお見舞いされたいものだ。

 

年末ジャンボ宝くじでも買ってみようか?

 

 博才の無い私が当たるはずもなく、現実に引き戻される。

 

 私 「サンタさん。僕は何も要らないので、世界中の人々に幸福を。」

 サンタクロース「何ていい子なんだ! 君には取って置きのプレゼントをあげよう。」

 私 「わーい!現金だぁ!」

 

    

 ともあれ、Have a happy Christmas
                   



2008年12月16日(火)
「 ふたりぶん  













 一昔前は、車を後退させる時に、助手席側に振り返って運転するのが、男性がする仕草の中で、女性に人気があったらしい。

 

 最近では、敢えてその様に運転する男性は気持ち悪がられるという。

 

 別に格好をつけている分けではないが、体が硬いとついつい振り向く時に、助手席に掴まって振り返らざるを得ない。

 

 しかしこの所、体が硬いから振り向き辛いのではなく、何やら横っ腹に抵抗勢力を感じる。

 

 12月も半ばになり、信州は益々厳寒期に差し掛かる。

 

 夕方にでもなれば、吐息は白く空に溶け行き、暖かいお風呂が恋しくなる。

 

 「環境!環境!」と叫んでいると、偽善者の様に思われてしまうが、経費削減も考えて温室のカーテンを3重にした。

 

 我が家の古くて小さな温室の2重カーテンの隙間に3層目を設置していく。

 

 冬場に来て、長く伸びているパパメイアンとイントゥリーグは、何やら邪魔そうにこちらを眺めている。

 

 カーテンとカーテンを開閉する為のワイヤー、ワイヤーを巻くローラー、ローラーを動かすパイプ、パイプを動かすモーター、その全てを手作業で付けていく。

 

 カーテンの設置は私にとっても初めての事なので、繁々と父の手元を眺め手法を盗む。

 

 何やら建設業に転向したみたいで面白い。

 

 冬場と言え、お天道様が顔を出せば温室内は常夏だ。

 

 汗が玉になって顔面を流れていく。

 

 一日働けば、喉も渇くし、腹もペコペコだ。

 

 風呂に入って、一日分の水分補給にビールを飲む。飯も食う。

 

 いつも半人前の私は、たまに一人前に働けば二人分飯を食う理屈になる。

 

 冬になれば保温の為、カーテンも脂肪も増加する。

 

 もうバックはしません。前進あるのみ!


2008年12月14日(日)
「 タクシー  

 貧乏性の私にとって、タクシーに乗るのは、なかなかの贅沢である。

 

 それでも已むを得ず利用する時がある。

 

 タクシーの後部座席の左のドアはレバー一つで自由に開閉できる。

 

 案外に画期的な技術だ。

 

 わざわざ運転手さんが回りこんできて、外からドアを開けてくれるタクシー会社もあるが、なんだか自分が偉くなった様で、気恥ずかしい。

 

 私の友人で農業や花に携わっていないのに、堀木園芸のブログを読んでくれている人がいる。

 

 先日その友人に、

「何で堀木の所は、食い物作ってないのに、減農薬や有機農薬にしているの?」

と詰問された。

 

 私は藪から棒な問につい慌ててしまい、碌な回答が出来なかった。

 

 環境の為と言ってしまえば、聞こえは良い。

 

バラの為。病虫害の抵抗(同じ農薬を使い続けると、その薬に免疫を持つ病害が発生する)を抑える為。経費節減の為。農薬散布をする自分自身の為。

 

様々な要因があるが、もっと単純に考えてしまえば、元に戻しているのである。

 

「効いたよね。早めのパブ○ン!」は効果的であろうが、人は風邪のひき始めには、手洗い、うがい、マスク、ネギ等色々な手段を講じる。

 

「寒い!」と言いながらエアコンの設定温度を上げるよりも、厚着をする方が堅実的だ。

 

まずは自分でやれる事をやってから、高度医療に身を任せた方が自然の流れの様な気がする。

 

10月に木酢液をベースに作って、寝かせていた手作り有機農薬を最近使用している。

 

科学農薬と違い、すこぶる効果があるわけではないが、魚のアラを入れた液はダニに効果を示している。

 

今後も変化があれば、ブログで報じたい。

 

自動ドアのタクシーの方が、本来は高い技術なのに、運転手さんに空けて貰った方が得な気がする。

 

マンパワーが尊ばれる中、我が家はひたすらに人力だ。









2008年12月9日(火)
「 霜降りて 木苺の葉の 白銀の 甘き香りの するはずもなく  

 秋の夜長というが、冬の方が夜は長い。

 

 仕事帰りに久し振りに、町の図書館に本を物色しに赴いた。

 

 薄汚い格好のまま、図書館へ入ると正面玄関の自動ドアの所で主婦らしき女性数名に、訝しげな視線を向けられた。

 

 小汚い姿の私が図書館に入ることが、そんなに物珍しいのかと、少し気分を害された。

 

 不機嫌なまま図書館に入ると、「蛍の光」が流れていた。

 

 閉館時間らしい。

 

どうやら先程の奥様達の視線は、定時を過ぎてから堂々と図書館に現れた男に対する憐れみの眼差しであった。

 

私は殊の外小心者で、他人の視線や意見が気になってしまう。

 

 先日も箱詰めの時、「ザ プリンス」と「プリンセス オブ ウェールズ」と同じ箱に入れようか、入れまいか悩んでしまった。

 

品種名だけで「ピン!」とくる方は、バラ通である。

 

「ザ プリンス」はイギリス王室のチャールズ皇太子の事であるし、「プリンセス オブ ウェールズ」は、今は亡きダイアナ元妃の愛称である。

 

婚礼用として使われるであろうに、この二つのバラを同梱するのは、いささか気不味い。

 

花の知識や、こだわりのある中卸・お花屋さんが、同梱されている状況を見たら、なんと思うだろう。

 

そうかと言って、わざわざ20本ずつのこのバラ達の為に、ダンボール箱を2つ使うのも気が引ける。

 

悩んだ挙句、同梱してしまうことにした。

 

 決断してからの私は速く、飲み込まれる様に、2つのバラをダンボール箱の内へ仕舞いこんだ。

 

 結論としては、「悩む時間が勿体ない。」

 

 歳を取るたびに年々図々しくなっていく自分が、それほど嫌いじゃない。
 



2008年12月6日(土)
「 Soaking  

 







 私は先輩と酒を呑みに行くと「堀木に呑ませるのは勿体ない。」とよく言われる。

 

 一気飲みのお囃子がかかると、何の躊躇もなく呑んでしまうし、そんな強要をされるまでもなく、酒を呑むペースが速い。

 

 瓶ビールは何度も注がれるも面倒なので、手酌で十分だし、後輩にも「気を使うな。」と告げる。

 

 それは酒だけに限らない。食事中も喉が渇くため飲み物を大量に摂取する。

 

 ラーメン屋で豚骨ラーメンでも食べようものなら、コップ56杯は水を飲む。

 

 それだけ水分を普段から補給していても、私は乾いている。

 

 コンタクトレンズをしている訳でもないのに、日々ドライアイに苦しめられ、外出時はリップクリームを欠かさない。

 

 12月に入り「イリオス!」の納品を待たず、「ティネケ」を扱いでしまった。

 

 3日の水曜日に、新苗が到着したので、家族総出で定植してしまった。

 

 水耕栽培の改植は、土耕に比べ非常に楽で、50坪程の改植は、男2人いれば2日を必要としない。

 

 まだ青々とした木の根元に、感謝と共に剪定鋏を入れ、荒縄で纏めて室外へ運び出す。

 

 捨てられるのを拒むかの様に絡みつくトゲなど、一切意に介さない。

 

 1週間ほど前から施肥を止めてしまえば、ロックウールは水気を失い、とても軽くなる。

 

 ところが、今回は天候不順が数日あった為、ロックウールがまだ水分を含んでいて、かなり重く、持ち上げようとすると、自重で千切れてしまう。

 

 そうであっても、堀木家の男子たるもの一度手を付けた仕事は、重かろうが濡れようがやり遂げる。

 

 やり遂げた後の手と足元は、ロックウールから染み出した水でびしょ濡れのしわしわだ。

 

 これで少しは私も潤っただろうか。




2008年12月1日(月)
「 幾星霜  

 先週、東京に住む祖父の弟が、奥様を連れて里帰りをされた。

 

 それに伴って、長野県伊那市に住む祖父の弟も、奥様を連れて我が家に遊びに来た。

 

 元々、男ばかりの五人兄弟であったが、祖父は弟二人に先立たれ、今は三人兄弟となった。

 

 年に一回は、国内に散った「堀木」が、生家に戻り宴となる。

 

 最年少の東京に住むおじさんは、電気製造業をしていた為に、機械に強く、最近秋葉原で買ったという一眼レフのデジタルカメラの性能を私に自慢してくれた。

 

 彼らの幼少の頃は、カメラは写真館にしかなかったという。

 

 車もなく、電話はその地区のお金持ちの家にしかなかったという。

 

 祖父の年代ほど、激動の日本を見てきた人はいないであろう。

 

 人の家に電話を借りに行って、交換手に電話を繋いで貰っていた時代から、掌に納まりテレビも写真も撮れる携帯電話が小学生にまでも普及している。

 

 車はまだ空を飛ばないが、なかなかの未来絵図ではある。

 

 我が家の「イリオス!」も少し理想の姿に変貌する。

 

 今まで、土耕栽培をしていた為、サイズが30cm60cmしか切れなかったが、来年から水耕栽培をする事にした。

 

 「イリオス!」を愛玩して頂いているお花屋さんから、丈の長いものが欲しい。と言う要望を叶える為である。

 

 元々、花保ちがいい品種なので、水耕にしても花保ちはいいだろう。丈も10cmは長くなると思う。

 

 S40cm)サイズが中心であったが、M(50cm)中心で出荷できるであろう。

 

 暫らくお休みさせて頂くが、また花保ちが良く、縁が淡く白みがかった明るい黄色をご愛顧頂ければと思う。

 

 「今年が最後かもしれない。」と周りが引きつり笑うしか出来なくなる様な、年寄り特有のブラックジョークを飛ばしながら、楽しそうに酒を酌み交わす。

 

そんな祖父兄弟を見ると、微笑ましく、家族の大切さをしみじみ感じる。

 

「堀木の悪ガキ5兄弟」は当時でも有名だったそうだ。

 

私にも悪ガキの血は脈々と受け継がれている。

 

でも私はハゲない!!













     
    


2008年11月28日(金)
「 入鉄砲に出女  











*「フラワーヘブン」は社名、
「マチルダ」は店舗名


 江戸時代、徳川幕府は関所を各地に設けて、江戸に鉄砲が入ってくることと、女性が江戸から出る事を禁じたという。

 

 平成時代になり、大和撫子は情けない日本男児になど目もくれず、行動的だ。

 

 海外旅行に行ったり、国内を一人旅したりという話が耳朶に触れる。

 

 私など、精々少し慣れた東京に足を伸ばす位だ。

 

 先週の木曜日に「フラワーヘブン」の10周年記念パーティーがあり、招待されたので出席した。

 

 代表の角さんとは、世田谷花き市場で働いていた時から、花の事を教えて頂いたり、お店を見学させて頂いたりと、折に触れ良くして頂いた。

 

 会場は六本木ということもあって、若干緊張したが、モダンな吹き抜けの会場に、色とりどりの洗練された花が飾られていた。

 

 スタッフの方は、右肩の後ろに「マチルダ」のロゴマークであろう、クローバーをあしらったカーディガンと真紅のエプロンをお揃いで着用していて、ニコニコと親切に接客してくれた。

 

 大人びたトーンの部屋の中に、スポットライトを浴びたアレンジメントがとても綺麗だった。

 

 開演とともに、社史や店舗のコンセプトを司会の方が披露されていた。

 

どうやら私が入場時に感じた様に、「フラワーヘブン」の特色としては、鮮明な色の花を使われる様だ。

 

「くすみ」が売りの堀木園芸には、不向きな様な気がした。

 

とはいえ、終始感嘆しながら、目の前に披露される「フラワーヘブン」スタイルのデザインを拝見していた。

 

すると一人の女性スタッフの方が、

「マチルダ」は鮮やかな色合いの花が多いですが、こういう淡い色のデザインも提案しております。」

と手にしているブーケには、我が家のオリエンタルキュリオーサとロマンティックキュリオーサが。

 

 手元を放れた娘達が、東京で一人前に活躍しているのを見ると、何やら胸が熱くなる。

 

 それでも昔と違い、遠出が億劫になってくる。

 

 家にこもり、食欲の秋を満喫し、更に忘年会シーズンを迎える。

 

 まさに出不(デブ)精である。



2008年11月26日(水)
「 北風小僧  

 11月も下旬に差し掛かり、初雪が降った信州は、紅葉を賑わす山と白雪を冠する山脈の対比が四季の移り変わりを印象付ける。

 

 日も4時半にもなれば、山火事の様に西の山々を茜色に染める。

 

 日の出の前に仕事を始め、日暮れと共に仕事を終える農家にとっては、仕事の時間が限られ、忙しなくなる季節だ。

 

 先日、仕事を終え帰路に付くと、いつもは狭い道いっぱいに横並びになって、楽しそうに学校から帰る子供たちが、行進の様に縦一列になって歩いているのが見えた。

 

 どうやら風が強いらしい。

 

 幼い頃から常々思っていた事だが、我が町、松川町の冬は、朝は北風が吹き、夕は南風が吹く。

 

 南風と言っても、暖かいわけでもなく冬の凍てつく風だ。

 

 私の様に、学校より南側に住む子供たちにすれば、試練である。

 

 登校時は真正面から凍えた北風に阻まれ、下校時は凍てつく南風を顔面に受ける。

 

 よく見ると、先頭を歩いている少年は、後ろの子供たちより体が一回り大きい。

 

 「ドラえもん」で言えば「ジャイアン」的な感じの子も、こんな時は役に立つ。

 

 「役割」というものは、他者が存在する限り如何なる状態においても、成立する。

 

 我が家のバラも高冷地という役割があり、初夏から晩秋にかけて、高品質のバラを大量に供給しなくてはならない。

 

 「大量」という点では、今一つ力及ばずであったが、そろそろ植え替えや、土耕栽培のバラにおいては、剪定の準備の為、徐々に暖房の温度を落として行き、高冷地の役割を終える。

 

 もちろん、水耕栽培の品種は冬場も出荷はあるし、12月中旬までは、土耕のバラも出荷はするが、今後益々我が家の出荷量は減るであろう。

 

 折を見て、「News」のページに出荷動向をアップするので、ご覧になって頂きたい。

 

 冷たい風を受けて、小さくなって歩く子供たちを見ると、暖房の効いた車の中で、

「あぁ、大人って最高!!」

と思ってしまう。

 

 子供たちよ。どうかこんな薄汚れた大人にならないで欲しい。













2008年11月19日(水)
「 PEAK  
















人の生涯には2回「モテ期」というものがあるらしい。

 

 異性に集中的にモテる時期ということで、正に人生のピークだ。

 

 長い人生において2回とは、甚だ寂しいものだ。

 

 少し前後するが、日バラの全国大会の初日に、岐阜大学の福井教授の講義を拝聴した。

 

 主題は「ヒートポンプ(エアコン)」の事であったが、講義は生産の基本的な思考の見直しや、国際的な視野から見たバラの生産姿勢など、多岐に渡った。

 

 そこで私が心を捕われたのは、教授が出した資料の一つである。

 

○営業を市場に全て任せない。

○生産・出荷情報を生花店主に連絡する。

○顧客は市場ではない。

○購入してくれた生花店を把握。

○顧客の需要傾向を把握。

○新品種導入にあって生花店の意見を聞く。

 

 一部、抜粋したものだが、ある生産者が生産・販売において心がけている事だという。

 

 私は、市場関係者が出席していたのを知っているので、少しハラハラした。

 

 何故なら上記の6項目は、悪く言えば「市場を当てにしてはならない。」と言っている様なものだ。

 

 私は自らが市場の仕事をしていたこともあって、市場に多大な信頼をおいているし、上記の数項目も市場の役割であると信じて疑わない。

 

 我が家のブログを読んでいる市場関係者が、何名いるか知り得ないが、生産者が上記の項目を真しやかに信じ、実行したらどう思うだろう。

 

 市場は花き業界という大きな山の頂である。

 物流業務に留まらず、種苗会社、産地、生花店、輸入商社を麓に見渡し、情報と交流を支配できると思うのは過信であろうか。

 私は人生のピークである2回の「モテ期」の恩恵を受ける事無く28年生きてしまった。

 

 今となっては女性より「諭吉」にモテたいと思うのは年のせいであろうか。

 



2008年11月14日(金)
「 愛しむ  

 しばしば有名人同士の交際が公になると、「熱愛発覚!」などと、たいそう大袈裟に報道される。

 

 「熱愛」とは激しく愛し合う事らしいが、激しく愛し合っているか、どうかなど本人達以外に分かるはずもない。

 

 そもそも日本人は欧米人ほど頻繁に「愛している」と口に出す民族ではない。

 

 さらに「愛」の字を一つ取ってみても、「めでる」「おしむ」「いとしい」「かなしい」と様々な読み方がある。

 

 読み方同様に「愛」と言うものは様々な感情が交錯するものであろう。

 

 前回記した、神奈川県秦野市の谷さんの圃場を見学した後、同市内の石井さんの温室も見学させて頂いた。

 

 石井さんのお宅は、親子三代に渡るバラ農家で、正に由緒正しきバラ屋である。

 

 私も以前から、数回ほどお邪魔させて頂き、その度に勉強させて頂くのだが、いつ訪れても、初代の石井さんが選花をされており、奥様がお茶を入れて下さる。

 

 今回も同様に、初代の石井さんが選花をされており、お年を伺うと90歳を越えているという。

 

 二代目の石井さん曰く、「足はだいぶ悪くなって、何とか作業場に来る程だけど、バラの棘が指先を刺激するのか、頭は今も健在だ。」との事。

 

 お仕事をされている姿を、拝見させて頂いても、黙々かつ丁寧にバラを束ねられていて、とても一世紀近く長生きされているご老人とは思えない。

 

 また選花の際にバラを見る眼には、私には到底出す事の出来ないバラへの愛情を感じる。

 

 初代の石井さんが「バラ仙人」であれば、私など所詮、「門前の小僧」程度である。

 

 神奈川県のバラ生産の歴史は長く、私の様な未熟者が訪れると、その技術の奥深さと、バラ農家のバラを愛しむ気持ちに只々、平伏させられてしまう。

 

 今回の日バラ全国大会も私にとって大変有意義なものとなり、ご尽力を頂いた役員や神奈川支部の皆様には謝意を表したい。

 

 江戸時代の葡(ポルトガル)和辞典には、「Amor(アモール:愛)」は「大切」と訳されている。

 

 私も「愛」とまでは及ばずとも、我が家のバラを「大切」にしたいものだ。

    

2008年11月12日(水)
「 匂い  

 11月に入り、晩秋の信州は冬色に染まってゆく。

 

 山々の紅葉も見頃を過ぎ、空気は冷えて乾き、空は澄み渡る。

 

 冬の匂いがする季節となった。

 

 先週、「日本ばら切花協会」の全国大会に足を運んだ。

 

 大会2日目に見学させて頂いた。谷 茂さんの温室は、「すごい!」と一言以外は全ての言葉を失わせる。

 

 若輩者とはいえ、私は今まで数多くのバラ農家の温室に足を踏み入れた。

 

 その私が思うに、土耕栽培において、神奈川秦野市の谷さんのバラ作りは、間違いなく「天下無双」の実力である。

 

 牧草に囲まれたバラは、竹林の如く、上へ上へと枝を伸ばし、その枝にはことごとく青々とした厚みのある葉が茂っている。

 

 蕾をつけているバラは、細身だが力強く、花切り作業を想像すると憂鬱になるぐらい、木々は花を付けている。

 

 未熟者の私だけなら未だしも、熟練した全国のばら職人の褐色オヤジ共も唸りをあげる。

 

 少しでも、情報を聞き出そうと、誰しもが谷さんに群がり、四方八方から質問が飛び交う。

 

 しかし、その答えには更に驚愕を覚える。

 

 施肥も土壌に含まれる栄養も農薬散布も極端に少ない。

 

 勘のいい人の事を「鼻が効く」とか「鼻が良い」という。

 

 剣の達人は、敵が近付いただけで、血の匂いがするという。

 

 鋭い感性は嗅覚を刺激するようだ。

 

 データや数値を蔑ろにするのは、今のご時世甚だ愚かではある。

 

 もしかしたら、谷さんのバラ栽培にも極秘の生育数値があるかもしれない。

 

 しかし、職人の勘や感性の様に、バラを見て感じ取る「匂い」や「声」を嗅ぎ取れる生産者に私もなりたい。

 

 その為にも、酒臭い自分自身であってはならない!

 

・・・ウコン飲も。







2008年11月7日(金)
「 コマーシャル ~ オレンジジュース! 編 ~  

 半年振りに長期休暇が取れたので、故郷に帰省した。

 

 母と祖母が腕を振るってくれ、その夜は家族みんなで小宴となった。

 

 80歳を越えても尚元気な祖父母は、少し酒を飲んで上機嫌になると戦時中の話をする。

 

 昔は、土手の雑草まで食べたとか、一つの生卵を兄弟三人で分け合った話など。

 

 もう何十回も聞いているが、孝行と思って黙って聞いていた。

 

 そういえば、祖父は毎朝目玉焼きを食べている。

 

 我が家では、母が朝食を作っているが、何故か祖父の目玉焼きだけは祖母が、毎朝作っている。

 

 しかも、丁度いい半熟具合だ。

 

 夫婦円満な祖父母を冷やかしてやろうと思い、

「じいちゃんは、毎朝目玉焼きを食べているけど、ばあちゃんの目玉焼きが好きなの?」

と聞いてみた。

 

 昔気質の祖父は急に小声になり、

「別にあんなもんは好きでもなんでもねぇ。」

と大口を叩いた。

 

 すると、それまでニコニコしていた祖母は急に仏頂面になり、

「じゃあ、明日からいらないね!」

などと言い出し、一時険悪な雰囲気になってしまった。

 

 翌朝、そんな事などすっかり忘れて朝食の席に着くと、祖父の食卓には目玉焼きがない。

 

 長年の夫婦生活に亀裂を入れてしまったかと、心中気が気ではなかった。

 

「勲。花壇の肥料を買いに行くから付き合ってくれ。」

 

 祖父に頼まれ、近くの花屋さんに赴いた。

 

 さっさと肥料袋を2袋選ぶと、代金を払ってくるから車に積み込んでくれと私を残して、祖父は店の中に入って行った。

 

 車で待っていると、祖父が小さなバラの花束を持って帰ってきた。

 

「これ、ばあさんに、花瓶に活ける様に言っといてくれ。」

 

 次の朝から、また半熟の目玉焼きは、祖父の朝食を彩った。

 

 

 ありふれた毎日を特別な一日に


 恋人みたいな夫婦にはオレンジジュース!



                             
Product by 堀木園芸

2008年11月2日(日)
「 風の音に 雲の間に間に 流れ星  君の影追う 消えと知りつも  









 我が家の段ボール箱は、少々ダサいが、昔から変わらないデザインと頑丈な作りに、私自身は満足している。

 

 しかし、上質な段ボール故に値は張る。

 

 原材料高の煽りを喰らい、先日また値上がりした。

 

 だから、成るべくなら発注したくない。

 

 そうも言っていられないので、気重だが段ボール会社に電話をする。

 

 ところが、電話を切り終えた後には、清々しい気分になっている。

 

 長野県飯田市「アイパックス」という会社の電話対応がすこぶる良い。

 

 3ツ星レストランの様に気品高い訳ではないが、明るく元気で親切に対応してくれる。

 

 しかも、一人だけではない。

 

事務の方の誰と話しても愛想が良く優しい、それでいて馴れ馴れしくない。

 

 社員教育がなっているのか、たまたま粒揃いなのか。

 

理由は分からないが、兎にも角にも素晴らしい!

 

営業、物流、生産部門は花形であるが、総務や事務こそ、木陰に咲く野草の如き安らぎを覚える。

 

決して、相手が女性だからとか、誰かに媚を売る様な低能な理由で言っているわけではない。

 

大金を置いてく客だけが上客ではない。

 

商売を円滑にするには、彼女達の様な些細でも貴い心遣いが必要不可欠である。

 

若干の値上げなど、目を瞑りたくなる。

 

私も彼女達を見習って、市場やお花屋さんから電話を頂いた時は、もっと愛想を良くしてみようか?

 

そうすれば、もっとバラが売れるだろうか!?

2008年10月30日(木)
「 手放したくない  

 最近、我が家の温室の前にある用水路の工事が行われている。

 

 子供の頃、よく川を塞き止めて遊んだり、幼い妹が落ちて流されたりと思い出のある川である。

 

 川の流れの様に、世の中は絶えずして、移り変わって行くものである。

 

 同じ状態に見えても、常に成長と退廃を繰り返すものである。

 

 先日の世田谷花きバラ研究会の翌日に、旧知の数人と昼食会を行った。

 

 昼食会と言っても、爽やかなものでなく、昼から焼肉とマッコリと文面に起しただけで、唾液腺を刺激する美味しく、楽しいものとなった。

 

 当初の話題は、近況報告や現在の花事情に関してである。

 

 その後の主だった話題は、私が我が家のブログで公表していいのか分からないので、伏せておく。

 

しかし、「花き業界」と言う大河に、一石を投じる事となるだろうと、私は期待している。

 

 頬張った焼肉と流し込んだマッコリと同様に、私もその波紋に一口噛めたらと思っている。

 

 育んだ友情や恩義とは、鉄よりも硬く、私とっては宝物である。

 

 

 成長を続けるのか、退廃して行くのか、花業界の先を知る者など、いずれもいない。

 

 ただ、ご馳走して頂いた肉と酒が、私の体脂肪となり蓄積され、成長し続ける花業界で、爆発燃焼できる様に、今から精進したい。

 

 

 私は、妹が川に流された時、助ける事が出来なかった。

 

そんな、情けない自分を悔やんだ。

 

 流れ行く時勢を掴めない。そんな男にはなりたくない!

 

 あ・・・健在ですので。













2008年10月26日(日)
「 ドッキリか? ドッキリなのか!?  







 年かさの方が若人を捕まえて、年齢を聞き出した後、大抵の場合「若いねぇ~、いいねぇ~。」と付け足す。

 

 若人もやぶさかでない様子で、然も自慢げな顔をする。

 

 ところが、私は若いという事に然程、羨ましさを感じない。

 

 自分が生れ落ちて、積み重ねてきた歳月の方が、若さ等という一過性のものよりも輝いて感じるからだ。

 

 先日の水曜日に、世田谷花きバラ研究会と世田谷花き買参人事業共同組合の「小さな勉強会」が共同開催された。

 

 バラの生産者とお花屋さんが、一堂に会し、新品種のバラを見て検討をし、またその新品種のバラを用いて実際にアレンジメントを披露する。

 

 昨年も出席したが、大変素晴らしい会合だと、感嘆する。

 

 バラについて多くのお花屋さんから、意見交換する機会というのは早々ないからだ。

 

 フラワーアレンジメントのデモンストレーションの時間になり、別会場に足を運び、見学した。

 

 数名のデザイナーの方が、我が家の「ワンダーウォール」と「バイアモーメント」「オレンジジュース!」を使用していた。

 

 デモンストレーションの合間合間や終了後に、「ワンダーウォール」達の賛美の言葉を頂いた。

 

 自らこんなことを言うのは大変恐縮であるが、耳を疑うほど大絶賛して頂いた。

 

 私の父が母が、祖父母が30年余り努力して来た事が、ここに至り実を結んだと思うと、老いが始まり涙腺の緩くなってきた私の目頭も熱くなった。

 

「僕まだ23ですからぁ~!」と自負する若者よりも「23年バラを育てています。」の方が、何物にも替え難い輝きを感じる。

 

 ただ、あまり褒められると「これはどっきりテレビなんじゃないか!!」と疑心暗鬼になってしまう。

 

 天邪鬼の私は、後ろから迫り来る「ドッキリ大成功!!」の看板が恐ろしくて気が気ではない。


2008年10月24日(金)
「 Online  

 「供給」というものは常に「需要」の下に成り立っていると私は思う。

 

 物を買いたい人がいて始めて、商売は成就する。

 

 生産者、供給者として、消費者、需要者の意向を無視する事はできない。

 

 しかし、相反する2つの要求を満たそうとする時に、私はどちらを優先させればいいだろう。

 

「品質の高いバラが、大量に欲しい。」

 

 この時期の日柄が良い週末は、ブライダル向けの花の需要が爆発する。

 

 我が家の電話も忙しなく猛り、Fax用紙を吐き出す。

 

特に、白系のバラは奪い合いになり、市場から送られてくる注文書も無謀な程の注文本数になる。

 

 しかし、その大量の需要にも応えようとするのが、供給者の常である。

 

 もちろん、その背景には注文出荷であれば、高単価を期待できるし、故に利潤を求める気持ちがないと言えば嘘になる。

 

 確かにそうであっても、お花屋さんや市場の期待や要請に応じたいと思う心もある。

 

 もし、我が家が頑張って1本でも多くのバラを出荷しなければ、市場やお花屋さん、引いては今週結婚式をあげる人たちが困ってしまう。と思ってしまう。

 

 そんな風にも思うから尚の事、需要に沿って多く出荷したいと思う。

 

 本数が足りない場合は、少し切り前が硬くても(採花時期が早くても)、多少細かったり、頭が小さかったりしても、普段は出荷しなくても足してしまう。

 

 それが、仇になる時がある。

 

 品質が下がった。切り前が変わった。普段より短い、小さい、細い。と苦情を頂く事もある。

 

 余計なお節介だったのであろうか?思い上がりであっただろうか?

 

「代品はいくらでもある。」と言われてしまえば、私達の無駄な努力はことごとく水泡に帰す。

 

 気持ちが繋がっていない。

 

 そう思う時が、しばしばある。















2008年10月18日(土)
「 明け方の来訪者  











 こんな事を言っては、農家の風上にもいれないであろうが、私は太陽より月の方が好きである。

 

 聞いた話だが、毎日50分ずつ月の出は遅くなってゆくらしい。

 

 それに月は満ち欠けがある。

 

 つまり、毎日同じお月様が見られる事はない。

 

 だから、たまにタイミング良く見られると、つい見惚れてしまう。

 

 今日も朝の花切りの時に、西の空に薄水色の空に淡く溶け行く明けの白月を目にして、惚れ惚れしてしまった。

 

 先日、注文の直電をしてきたお花屋さんと携帯電話で話していた。

 

 「ジプシーキュリオーサ(グリーン)」の話になり、

「いくら?」と聞かれた。

 

私は何の戸惑いもなく、

「一本600円です。」と答えた。

 

 「高ぇよ!」と言われたが、そうは思わない。

 

 以前も記したが、生育段階で「ジプシーキュリオーサ(グリーン)」は7割程が枯れや腐りによって、スプレーとしての価値を失ってしまう。

 

 咲いた状態で1ヶ月も温室にいるのだから当然と言えば、当然だ。

 

 「格外のスプレーをばらして、ピンコロ(一輪もの)として出せば?」とお花屋さんに言われた事もあったが、アウトレットは抜き差しならない需要がない限り出荷しない。

 

 商売の幅を広げれば、どちらかに痛手を被るのは目に見えている。

 

 80cmのバラを出荷すれば、同じ品種の40cmは安くなる。

 

 スプレーで出せば、ピンコロは安くなる。

 

 ブランドショップもアウトレットストアが出来れば、本店が売れなくなる。

 

 月と同様にいつでもあるものじゃなくて良いと思う。

 

 あったり、なかったりするから、たまに出会えた時に情が深まると言うのもある筈だ。

 

 「いつまでもあると思うな、親とスプレー・ジプシーキュリオーサ・グリーン」

 

 語呂が悪すぎる・・・。


2008年10月15日(水)
「 逢 瀬  

 日が明くる毎に、夜明けが遅くなる。

 

 長く澄んだ夜の風に晒された朝の空気を吸い込むと、体に気が満ちてくる様に感じる。

 

 空が、これ程までに艶やかな光彩を放つ時期はないだろう。

 

 いよいよ、我が家の全温室の暖房機が稼動して一週間ほどが経つ。

 

 バラ達は寒気で引き締められた枝と葉を茂らせ、温かい夜に大きな花を開かせる。

 

 この時期になると、決まって本性を露わにするバラがいる。

 

 彼女はつるバラの性質を持ち、寒冷期には旺盛によく伸びる。

 

 そして、大輪の花を付けるわけだが、自重で曲がってしまう。

 

 よってこれから年内の「アブラハムダービー」はかなり天真爛漫な枝ぶりになってくる。

 

 歳末には剪定作業に入る為、それから3月までは冬休みとなるわけだ。

 

 ある意味、期間限定の姿となる。

 

 そして、堀木園芸に通の方々には、

「おっ! 堀木のとこのアブラハムが曲がってきたねぇ。もうそんな季節かぁ。」

と、秋刀魚や松茸の出回りを喜ぶように、旬の秋を感じて欲しいものである。

 

 さらに、堀木園芸マニアの方におかれましては、

「また会えたね。」

などと、たおやかに湾曲した「アブラハムダービー」を愛でながら、ため息の一つもついて欲しいものである。

 

 まぁ、「そんなやついねぇよ!」と言われてしまえば、それまでではあるが・・・。

 

 それでも「アブラハムダービー」は、自分は曲がりくねってしまったが、そんな自分でも愛してくれる白馬の王子様的な存在を求めているだろう。

 

 当然、私は「アブラハムダービー」が大好きである。

 

 しかし、残念ながら白いタイツは似合いそうに無い。

 

 それに、王子様より殿様の方がいい。
















2008年10月12日(日)
「 月明かりの下で  







 先日、叢雲のかかる半月を感傷に浸りながら、眺めていた。

 

 気が付くと、月に向かって光が迫っている。

 

 一等星くらいの明るさで、飛行機より早く、流れ星より遥かに遅い。

 

 ニュースで「国際宇宙ステーションは肉眼で見ることが出来る。」と耳にしたので、私はそれだと思い込んだ。

 

 ところが、月の近くまで行くと忽然と姿を消し、それ以後現れない。

 

 もしかしたら宇宙人が乗った宇宙船かもしれない。ともすれば、私は気付かない内に改造されているかもしれない。

 

 こういう場合、変化は徐々に現れるものだ。

 

 我が家のバラ作りにも徐々に変化が生じてきている。

 

 有機農法の取り組みに力を入れ始めた。

 

 蒸留していない木酢液に唐辛子、にんにく、魚のアラ等々を入れ3ヶ月熟成させる。

 

 害虫に対して忌避効果が高く、防除作用があるという。

 

 また土耕の有機肥料も購入するのではなく、昔の様に堆肥を作ることにした。

 

 以前は牛糞と藁を発酵させた物だったが、今回はおからと鶏糞を混ぜ、ある菌を植え付け発酵を促進させている。

 

 それらは科学農薬・肥料に比べ即効性もなく手間がかるが、当然の様に費用は安く、環境にも人にも優しい。

 

 まだまだ始動したばかりの計画なので、成果の程はわからないが、今後の我が家のバラを長い目で期待して頂きたい。

 

 宇宙人に改造された私もそろそろ兆候が現れてもいい筈である。

 

 そういえば、最近DVDプレーヤーのリモコンの調子がすこぶるいい!!

 

 サンヨーのマンガン電池はすごいなぁ・・・。

 

 いつまで経っても私は凡人の様だ。


2008年10月9日(木)
「 actually  

 9月、10月といえばバラ屋にとっては繁忙期である。

 

 私も命綱と言っても過言ではない「お昼寝」が出来ない日が続いている。

 

 忙しい割には、不意に昔の事などを思い出したりする。

 

 過去の楽しい記憶を思い出している時、人の脳はα波が出ているらしい。

 

 α波とは、人がリラックスしている時に出る脳波である。

 

 人間とは不思議なものだ。

 

 忙しく、体が疲れている時は、無意識の内に体がリラックス効果のある事をしているのだ。

 

 実際に、不可思議な事は身の回りに溢れている。

 

 我が家のオリジナルバラの「スペンド ア ライフタイム」がそうである。

 

 彼女は純白の花弁の端に細かいフリルが入り、開花と共に緑色の花芯部が顔を出す。

 

 世の中の大抵の花弁にフリルが入るバラは、冬場の花弁数が増え、大輪の花を咲かせる時にフリルの入りが多くなる。

 

 ところが「スペンド ア ライフタイム」は樹勢が悪い時の方が、フリルが入る。

 

 つまり株元から生える枝ではなく、脇から生える短い枝や夏場の細い時、少し弱っている時の方が、鮮明にフリルが入るのだ。

 

 もちろんフリルが入っていなければ、ただの白バラなので我が家では、なるべくフリルが綺麗に細かく入るように仕立てなければならない。

 

 と言う事は、樹勢を抑えて、もしくはバラに元気が無い状態で生育しなければならない。

 

 何とも訳が分からない。

 

 普通であれば、少しでも元気に、少しでも大きくと思うのが親心と言うものだが、今回ばかりはそうもいかないようだ。

 

 物を失くして「ない!ない!」と大騒ぎをしたり、人のせいにしてみたり。

 

ところが見付けてみたら、実際には身の回りにあった。

 

 こんな時でも私は決して謝らない。

 

 きっと意地悪な妖精の仕業に違いないからだ。

 

 世の中は摩訶不思議な事だらけである。











2008年10月5日(日)
「 鬼と呼ばれた男  














 先週の金曜日に日本バラ切花協会、通称「日バラ」の長野県支部のバラ農家の先輩達と静岡県浜松市にあるキリンアグリバイオ株式会社の品種展示圃場視察に行った。

 

 我が家の来年度の作付けを暗中模索している私としては願ってもない機会だった。

 

 山国を出て2時間。私はうっかり浜名湖を海と間違えて大喜びしてしまった。

 

 圃場に着くと連帯感の無い私は、イケメン営業マンの本田さんの後などには一切従わず、心の赴くままに新品種を物色した。

 

独り言を口元から垂れ流し温室内を徘徊する。

 

 良さそうなバラを発見すると、直ちに携帯電話で写真を撮り、堀木園芸ご意見番のお花屋さんにお伺いを立てる。

 

 そこでも更にいい返事が返ってくると、早速市場へ問い合わせ。

 

 0.2秒で不採用の返事が返ってきた(ハァ・・・↓↓)

 

 気を取り直し、キリンの圃場でキリン「生茶」をご馳走になりながら色々話を聞かせて頂いた。

 

 キリンで2時間半程の見学を終えると、最寄のカシマばら園芸さんに立ち寄らせて頂いた。

 

 突然の訪問にも関わらず、園主の岡部さんは、快く信州人の見学を許してくれた。

 

 話を聞くと彼も私同様、品種選択や栽培方法に悩みを抱え、模索しているようであった。

 

 かつて幕末に「鬼の副長」と呼ばれた男がいた。

 

 新撰組副局長の土方歳三である。

 

 彼は新撰組内の規律を厳しく定め、違反者はことごとく切腹させた。

 

 あまりに厳しいその行為に、周囲からの批判もあったが、彼は一切ぶれなかった。

 

 「ぶれない」

 

 今の日本人が侍でないのは、「ぶれ」があるからではないだろうか。

 

 人の意見を多く取り入れることは、至極大事な事だと思う。

 

 しかし、最後の決断を下し、責任を取るのは飽く迄も己自身である。

 

 私も心に二本差しを持つ者として、ぶれない男にならなければいけない。

2008年10月4日(土)
「 秋雨を 燻らす西山 眺むれば まだ見ぬ京の おたくさを想う  

 バラにとっては悪天候が続く。

 

 鬱蒼とした緑を纏った山々の頂には、ここ毎日の様に神々しい雲が空を覆っている。

 

 あれ程、空梅雨であった反動であろうか。

 

 南信州の短くも、暑い夏を耐え忍んだ我が家の庭木は喜んでいるようだ。

 

 温室の中に入ると、雨音が強くて普段聞いているラジオが聞こえない。

 

 雨音の中で漂うように仕事をしていると、ついつい妄想癖に拍車がかかってしまう。

 

 「タイムトラベル」と言えば万民の夢であろう。

 

 そこで私は「タイムロッカー」という装置を思い浮かべた。

 

 箱の前後に扉が付いた大きな金庫の様な物で、「過去口」と「未来口」の扉がある。

 

 例えば、相場が暴落に相反して花が多い時に「過去口」からバラを入れておく。

 

 そして需要期に「未来口」から過去から来たバラを取り出す。それでも注文が重なりバラが足りない時は「過去口」を明けてバラを取り出す。

 

 しかし、後者の場合は必ず取り出した分のバラを将来「未来口」から入れておかなければならない。

 

 もちろん、タイムトラベルをしてきたバラは新鮮そのものだ。

 

 ここで用心しないといけないのは、扉を開けた時にロッカーの中で未来や過去の自分と会ってしまう場合がある。

 

 そうなると「タイムパラドックス」という現象が起きて、最悪の場合は宇宙が崩壊してしまう。(バック トゥ ザ フューチャー参照)

 

 そんな宇宙規模の危機的な状態を案じることも無く、現実は注文の対応に四苦八苦する。

 

 私に出来ることといえば「たくさん切れますように!」と柏手を叩いて温室に入ることぐらいだ。











2008年9月28日(日)
「 努力・友情・勝利  











 準メタボリックの腹を抱え、順調に中年の階段をのぼるシンデレラボーイの私も、週に一回少年に帰る時がある。

 

 それが毎週月曜日の「週間少年ジャンプ」の発売日である。

 

 一時、極貧生活の時は買い控えていたが、小学生の時からずっと愛読している。

 

 月曜日だけは、普段の雑踏や雑念、邪念、煩悩を捨て去り、ネバーランドに旅立ちファンタジーと言う名の大空を飛び回るのだ。

 

 

 今朝、花切りをしていると、白い吐息が出る。手に悴みを覚える。

 

 温室内の温度計を見ると、10℃を下回っている。

 

 最早、冷蔵庫内といくらも変わらない気温だ。

 

 北海道では早くも初冠雪を記録したようだ。

 

 これから日増しに信州は冬の到来を迎え入れる。

 

 いよいよ、暖房を始める季節となってしまった。

 

 何処も彼処も不景気な話題が尽きないが、重油1L 130円では先行きが案じられてならない。

 

 ちょっと前では1L 130円と言えば、レギュラーガソリンの値段だ。

 

 問答無用で重油と資材代、肥料代が値上がりしてくる。

 

「本当に申し訳ありませんが、値上がりします。」

と言える商売は楽である。

 

「相場」と言う絶対的な事象に左右されてしまう農業。

 

このご時世、お花屋さんも苦しいのは承知ではある。

 

 しかし、費用ばかりが嵩み、収入が上がらなければ、ジリ貧になるのは必至である。

 

 と現実ばかりを直視していては、精神的にも疲労するだけなので、「ジャンプ」を読んで英気を養おう。

 

「海賊王におれはなるっ!」

 

 月曜日が待ち遠しい。

2008年9月25日(木)
「 エコエコホリキ  

 「ケチ」の語源は、不吉なことを意味する「怪事(けじ)」が訛り、江戸時代以降に「いやしい」や「貧弱な様子」として用いられるようになったらしい。

 

 「ケチ」と言われると、「恥」を嫌う日本人としては、あまりいい気がしない。

 

 しかし、近年その「ケチ」に追い風が吹いている。

 

 それが「エコ」である。

 

 環境に対する配慮が叫ばれるようになり、「ケチ」は「エコ」と言い換えられるようになり、物を大事に使う人は称えられる時代となった。

 

「エコ」と一言にいうが、私は2つの意味合いが「エコ」には含まれていると思う。

 

それが、「Ecological」と「Economical」である。

 

 前者は、「生態の環境」つまりは自然に優しいという事であろう。後者は、「経済、倹約」経済的でお財布に優しい。という事だ。

 

 必然とエコロジーをするには、エコノミーを意識しなくてはいけないし、エコノミーを実践していれば、自ずとエコロジーになる。

 

 そんな訳で、私にとっては大変仕事のし易い環境となった。

 

 ケチ臭い私は、何をするにしても「もったいない」の連続である。

 

 その象徴として、一社からバラの注文がたくさん入れば、大きな箱にまるでおせち料理の様にびっちり詰めていく。

 

 箱と運賃が節約できて、ゴミも減る。

 

 箱に入れる技術がいるし、市場からの苦情が来そうだが、そんなものはタダだ。

 

 これからもどんどん一箱に詰めて行きたい。

 

 先日は150本を一箱に詰めてみた。

 

 絶対に傷つかない自身もある。

 

 「ケチケチすんなよ!」と言われそうだが、「ケチ」ではない「エコ」である。

 

 私の貧乏性は環境に優しいのだ。

 

 生粋の日本男児である私は、不器用なのでなかなか人に優しく出来ない。

 

 だからせめて環境には優しくしてあげたいのだ。

 











2008年9月18日(木)
「 暁を拝みて暮れを憂い、月夜に新月を案ず  

 私は基本的に気が短い。

 

 電話をしている時に、長い間保留されていると、そのまま切ってしまう。

 

 外食の時、メニューの選択にほとんど迷いは生じないが、たまに二者択一を迫られた時は、両方食べてしまう。

 

 人と待ち合わせをしていても、待てず、コンビニへ行って逆に待たせてしまう。

 

 「迷い悩む」という時間の使い方に、強い焦燥感を覚える。

 

 そんな私が今、猛烈に悩まされている。

 

 と言っても、毎年9月は悩まされる。

 

 と言うのも品種入れ替えに伴う、新苗の発注が来月初旬に控えている。

 

 市販の新品種を導入するのか、既存の品種を植え直すのか、オリジナル品種の生産に踏み切るか、その決断は我が家の中では私が担当している。

 

 例年であれば、予め目ぼしい品種を見付けておくのが定石である。

 

 しかし、今年は父の鶴の一声で急遽思わぬ品種入れ替えとなった。

 

 今年の12月をもって「ブライダルピンク」が一線から退くこととなった。

 

 彼女は私が高校生の時に我が家に来たバラで、今となっては当家のお局様的な存在だ。

 

 10年以上の長期に渡り、本当に頑張ってくれた。

 

 流行の移り変わりの早いバラ業界において、これ程長い間、人々の挙式に立ち会った品種は稀であろう。

 

 正にピンク色の銘花である。

 

 彼女の後継者に成り得る存在を、模索するのは至極難しい。

 

 日を追う毎に、私のガラスのハートは軋み、底無しの胃は痛む。

 

 そんな私に光明は射すのだろうか?

 

 あまりの混迷ぶりにブログのオチも思いつかない。

 

 決して、腕が落ちた訳ではない。



















2008年9月16日(火)
「 イエス! フォーリンラヴ!  

 ①むらさき

②ホワイトグリーン

③レナート


④ハニーD

⑤クリーム

*画像をクリックすると大きい画面がみれます。

 以前、花屋で仕事をしている時のこと
である。

 

ラジオからスタジオ・ジブリの名作「天空の城ラピュタ」のテーマソングである「君をのせて」が流れてきた。

 

ジブリ好きの私はご機嫌で聞いていたら、女性の先輩が何を思ったかいきなり

「パズー!(映画の主人公の少年)」

と私に向かって叫んできた。

 

 今まで先輩に対して特別な好意を抱いてはいなかったが、私はその瞬間かなりときめいてしまった。

 

「フラジール」や「ワンダーウォール」が初めて花を咲かせた時にも同様にときめいた。

 

誰かに見せたくて父や母を呼びに行ったものである。

 

もちろん、私がときめいた程度で生産に入る訳ではないが、我が家の生産しているどのバラにも共通して言えることは、「私が好きだから」と言うのがある。

 

しかし、「好き」というのは様々な出会い方ある。

 

一目惚れの様に初めから好きになるのか、何かのきっかけで好きになるのか、気付かない内にじわじわ好きになっていくのか。

 

我が家に今、数種のバラがいる。

 

その娘らは、前から我が家にいるのだが、今一つ生産には踏み切れない。

 

そうかと言って棄てることもなく、私だけで楽しんでいる。

 

好きになってはいないが、気になってしまう。と言った感じであろうか。

 

最近、彼女達が纏まって咲いたので、ご覧になって頂きたい。

 

「惚れた!」とお思いの方は、ご一報頂きたい。

 

 

先輩が「パズー!」と叫んだ時、私も「シータ~!!(映画のヒロイン)」と叫んでいれば、二人は恋に落ちただろうか?

 

 今となってはそれだけが気がかりだ。

2008年9月11日(木)
「 愛を込めて花束を  

 怒りや憎悪というものは、ある種の感染症のような性質がある。

 

 報復や八つ当たりという形で感染していく。

 

 他者に心底腹の立つ行為をされた時、仕返しや八つ当たりをしてしまった事はないだろうか?

 

 

 先日、毎年恒例のロックフェスティバル(以後:フェス)に行ってきた。

 

 週休の無い私にとって、盆暮れ正月+フェスぐらいが定休日だ。

 

毎年、日柄や出演者の好みの都合上、訪れるフェスが不規則に変わる。

 

 今年のフェスは、第一回の開催という事もあって、段取りが悪く、不手際が多すぎた。

 

 それだけならまだしも、会場関係者の態度の悪さが一際目立った。

 

 私も大人気なく何度も腹を立ててしまい、今となって後悔している。

 

 数万人の人々が一組のアーティストの歌声に酔いしれると、会場全体に平和的な共通の感覚が生まれ、誰もが仲良くなれる気がする。

 

 祭りというものは、そういうピースフルなものでなくてはならない。

 

 しかも、最近話題のゲリラ雷雨の為、途中で中止になってしまった。

 

 友人と共に途方にくれていたが、「捨てる神あれば、拾う神あり」である。

 

 我々が車を駐車した駐車場のおばさんがとても親切で、料金格安にしてくれただけに留まらず、会場までのタクシー代を憂いて送って行ってくれたり、泊まるところのない我々の為に最寄りの旅館に問い合わせてくれたり、見つからなかったら、そのおばさんの空き部屋に泊まっていっていいとまで言ってくれた。

 

 結局、迷惑をかけてはいけないと、ご厄介にはならなかった。

 

我々はその親切なおばさんに何度も頭を下げ、夜中に私達はその町を後にした。

 

怒りや憎悪の感染症の特効薬は誰かの優しさではないだろうか。

 

Monkey Majik」というアーティストの曲に

「ただ、ありがとう伝えたくて。ただ君の笑顔を見たくて。今、幸せを伝えたくて。ありがとう君と出会えて。」(一部割愛)

という歌詞がある。

 

新潟の地に住むあのおばさんに、「ありがとう」と我が家のバラを送りたいと思う。

 

「ありがとう」や「おめでとう」に密接な関係のある花の仕事をしているのだから、私も温厚にならなければならない。














2008年9月4日(木)
「 Interactive  

 デブタレント、大食いタレントの方が「カレーは飲み物だ。」と公言している。

 

 全く持って同感である。

 

 カレーに関わらず、ツユダクの牛丼やラーメン、オムライスも私にとっては汁物だ。

 

 そんな私の最も愛すべき食事が「焼肉」である。

 

 激レアに火を通した肉をビールと共に喉元に流し込む。

 

 正に至福の瞬間だ。

 

 先日、プランツパートナーの松永さんに、お得意様の花屋さん巡りに連れて行って
もらった。

 

 現在は金だわしの様な頭髪だが、なかなか気が利く逸材だ。

 

 訪問先はホテル・リッツカールトン内の「花弘」様、「第一園芸」様、六本木の
「ゴトウフローリスト」様、文京区の「アルママルソー」様である。

 

 田舎者の私は終始、右に左に七面見渡し、大変充実した見学となった。

 

 近頃、講話やセミナーに赴くとしきりに話題に上るのが「生産者が行うマーケ
ティング」である。

 

 末端消費の趣向細分化に伴い、我々生産者はどれだけ自らの生産スタイルや供給
体制に合った消費者に的を絞り、生産方針を定めるかが急務とされている。

 

 まぁ、そんな小難しいことより、いつも我が家のバラを使って頂いているお花屋
さんに、我が家のバラ達の東京での仕事っぷりをお伺いし、至らぬ事があれば改善
していきたい。と言うことである。

 

 そんな中で、もっとこんなバラが欲しい、箱詰めの仕方を変えて欲しい等ご要望
を賜り、バラの豆知識や裏情報等をお伝えできれば、情報の相互交換が出来て、
より密な関係が育まれるのではないであろうか。

 

 携帯電話やインターネットが大幅に普及する昨今、もっともっと生産者、卸、
お花屋さんは簡単に連携が取れるのではないかと、私は思っている。

 

 そしてそうして行きたい。

 

 一緒に焼肉を食べると関係がより親密になると言う。

 

 そうであっても「喉越し重視」の私の焼肉スタイルは、倦厭されることや引かれる
ことが多い。

 

 でも、そんなこたぁ知ったこっちゃあない!

 

 「焼肉強食(焼肉の鉄板の前では、強い人間しか肉を食べられないの意)」なのだ。




2008年9月2日(火)
「 ビューティーコロシアム  








 もう十年前位の話になろうか。

 

 私の女友達が、よく外見のいい男に騙されて、悲しい思いをしていた。

 

それでもめげずに彼女は言った。

「性格は変われるけど、顔は変わらないもん。」

 

私は猛烈に腹を立て、その面食い女を糾弾した。

 

 それ以後、「イケメン」を見るとしばしば敵対心を覚える。

 

 

 信州だけとは限らないだろうが、信州では「盆が過ぎれば秋風が吹く」という。

 

 7月の中旬から行っているヒートポンプ(エアコン)による夜間冷房も終了した。

 

 というのも最早、早朝に至っては16℃を下回り、肌寒い中の花切り作業となる。

 

 そんな中、現在勢い良く出荷しているのが、「アンネマリー!」「グランス」だ。

 

 「アンネマリー!」においては、既に栽培を始めてから5年目に入り、我が家の中堅品種であるが、今年の秋は花も大きくなかなかの出来だ。

 

 「グランス」は2年目とまだまだ新米、昨年はボトリチス(花にシミが付いてしまう病気)に悩まされたが、ヒートポンプを利用しての除湿運転が功を奏して、元気に大輪の花を咲かせている。

 

 しかし、そんなことは当たり前である!

 

 今年の夏は例年より暑く、山間部の信州と言えど、寝苦しい夜を強いられた。

 

 一度眠ってしまえば、「不動の堀木」の異名を持つ私でさえも、夜間目を覚まし、冷蔵庫に駆け寄ったくらいだ。

 

 私でさえも、そんな思いをしているのに「アンネマリー!」「グランス」「ローテローゼ」においては夜間19℃設定の温室の中で、それは快適な眠りに付けただろう。

 

 これから頑張って稼いでもらわなくては、割に合わない。

 

 と言うか、「涼しい中、すくすく育ちやがって!」という妬みすら抱く。

 

 「イケメン」も「アンネマリー!」達も何も悪くないが、私から恨みを買う。

 

 美容整形の技術革新の中、一番治らないのは私の性格であろう。